『デジタルアートセミナー#3 openFrameworksで学ぶ、クリエイティブ・コーディング』という一泊二日のセミナーに参加しています。
最終的なまとめは最後に書くとして、とりいそぎ本日受けたセッションのメモを載せていきます。
セッション1 : C++テクニック
講師 : 堀口淳史、藤本直明
openFrameworksを本格的に使う上で避けて通れないC++のテクニックを学びます。
今回は、boostライブラリの使い方について学びます。
環境
- MacOS X 10.9.5
- Xcode 6.1 GMAIL.COM seed 2
- oF osx 0.8.4
- boost 1.56.0
boostとは
- C++の高度で便利なライブラリ
- STLを拡張
- oFにpocoってのがもともと入っている
- pocoとは設計思想が違う
- boostはテンプレートを駆使
- STLと違ってC++の開発環境に始めから入っていない
- boostで書かれた過去の資産を利用できるようになる
- ヘッダだけインクルードして使うライトな使い方もある
- 正規表現とかはコンパイルしないと使えない
- 自分でコンパイルしてMac環境で動かすのがなかなかハードルが高い
課題
- oFは32ビットバイナリ、boostは普通にインストールすると64ビットバイナリ
- oFとboostを同時に利用しようとすると、それぞれlibstdc++, libc++を使おうとしててこのあたりがリンクエラーとかの問題になる
→ 「oFで動くMacのboostバイナリ」をどう作るか?
解決策
- oFを64bitバイナリとしてコンパイルするのは簡単ではない
→ boost のコンパイル時に x86 を address-modelに `32_64` を指定する
- oFはlibstdc++利用前提、libc++を利用するとコンパイルできない
- boost はlibstdc++でもlibc++でもコンパイルできる
→ boost のコンパイル時に cxxflags と linflags に `-stdlib=libstdc++` を指定する
libstdc++とlibc++
- libstdc++は GCCと共に開発される古くから使われている標準ライブラリ
GPLライセンス
- libc++は LLVM/Clangと共に開発された新しい標準ライブラリ
- MIT ライセンスと UIUC ライセンス
(2014.10.13追記)libstdc++のライセンスについては、コメント欄より下記のようにご指摘いただきました。
libstdc++のライセンスがGPLというのは少し誤解を招いてしまいかねないです。
というのも、libstdc++は特別な条項(GCC Runtime Library Exception)が追加されているからです。これにより、libstdc++を使用するアプリケーションを作成しても、それを公開する際にGPLを適用する必要がありません。その点で、通常のGPLとは大きく異なります。
oFで手っ取り早く使う
- poco/include/ 配下に boost フォルダのヘッダを丸ごとつっこんじゃえば、パスが通ってるので、ヘッダだけならすぐに使えるようになる(行儀悪い)
- shared pointer とかはそのまま使える
スマートポインタ
普通のポインタ
ofImage * mTestImage;
mTestImage = new ofImage( "test.jpg" );
delete mTestImage;
new したら delete が必要。
スマートポインタの場合(ofPtr は oF のスマートポインタ)
ofPtr < ofImage > mTestImageSP;
mTestImage = ofPtr< ofImage >( new ofImage( "test.jpg" ) );
delete不要。
boostだと、
boost::shared_ptr< ofImage >
って感じでスマートポインタを使える
スマートポインタに NULL 代入はできないので、
mTestImageSP.reset();
で内部でデストラクタが呼ばれて NULL と同じ状態になる。( `if (mTestImageSP)` でfalseになる)
boostインストール
https://github.com/toolbits/boost_1_56_0_xcode610_universal_binary
boost_libstdc++.dmgを解凍
- ヘッダだけを使う場合は、includeのフォルダをパス通ってるとこにコピーする
- libはコンパイル済みのバイナリ
- Xcode6, MacOS X 10.9で動くようにコンパイルしたもの
- 一番よく入れるのが、`/usr/local`
- OS標準以外のあとから追加したライブラリとかを置く場所として(macでは)よく使われる
cd /user/local open .
この配下にコピー
サンプル1: boosted
両端のスペースをカットする文字列処理。ヘッダの機能だけ使用。
boost::algorithm::trim()
void ofApp::setup(){ std::string str; str = " Hello boost "; std::cout << str << std::endl; boost::algorithm::trim(str); std::cout << str << std::endl; }
サンプル2: boost_algorithm
文字列処理のサンプル。これらもヘッダだけで可能。
両端の空白を削除
boost::algorithm::trim(str);
カンマで文字列を分割
boost::algorithm::split(vec, str, boost::is_any_of(",")); for (it = vec.begin(); it != vec.end(); ++it) { std::cout << *it << std::endl; }
分割した各文字列の両端の空白を削除
for (it = vec.begin(); it != vec.end(); ++it) { boost::algorithm::trim(*it); } for (it = vec.begin(); it != vec.end(); ++it) { std::cout << *it << std::endl; }
各文字列を|を区切りにして連結
str = boost::algorithm::join(vec, "|");
文字列の置き換え
boost::algorithm::replace_all(str, "|", " / ");
文字列を置き換えた結果を返す
str = boost::algorithm::replace_first_copy(std::string("C++ source code"), "C++", "boooooooooooooooost");
サンプル3: boost_regex
正規表現のサンプル。これは要バイナリ。このサンプルが動けばboostの全機能が使えるということ。
※プロジェクトに libboost_regex.a が追加されている
boost::regex regex("[^/]+?\\.o$"); boost::match_results<std::string::const_iterator> result;
見つかった項目をすべて表示
std::string::const_iterator bit; std::string::const_iterator eit; bit = str.begin(); eit = str.end(); while (boost::regex_search(bit, eit, result, regex)) { std::cout << "match = " << result.str() << std::endl; bit = result[0].second; }
見つかった項目をすべて置換
str = boost::regex_replace(str, regex, "********.o");
※ofUtilsに同様の文字列処理機能もあるので一度眺めておくと良い
サンプル4: boost_format_lexical_cast
数値を文字列にキャスト。ヘッダだけでOK。
番号で指定された通りに値を文字列化
str = (boost::format("%1% %2% %3%") % 1 % "abc" % 3.14).str();
printf のフォーマット文も利用可能
str = (boost::format("%06X (hex)") % 12648430).str(); str = (boost::format("%d (dec)") % 0xDEADBEEF).str();
lexical_cast を利用した整数から文字列への変換
str = boost::lexical_cast<std::string>(141421356); std::cout << str << " (string)" << std::endl; std::cout << "---- ---- ---- ----" << std::endl;
lexical_cast を利用した文字列から整数への変換
ival = boost::lexical_cast<int>(str);
lexical_cast を利用した文字列から実数への変換
str = "0.12345"; dval = boost::lexical_cast<double>(str);
lexical_cast を利用した不正な文字列から実数への変換
str = "0.12???"; try { dval = boost::lexical_cast<double>(str); } catch (boost::bad_lexical_cast& e) { dval = NAN; }
サンプル5: boost_thread
スレッドをつくる
- libboost_system.a
- libboost_thread.a
サンプル6: boost_mutex
変数へのアクセスを排他にするためのmutex
- libboost_system.a
- libboost_thread.a
boost::mutex _mutex;
// カウント変数を増加
_mutex.lock();
++_count;
_mutex.unlock();
// カウント値を取得
_mutex.lock();
count = _count;
_mutex.unlock();
// lock() / unlock() の替わりに lock_guard を利用しても同じ boost::lock_guard<boost::mutex> guard(_mutex); // カウント変数を減少 --_count;
サンプル7: boost_lock
shared_mutex を使うと、マルチスレッド処理において、read/writeをいい感じにロックしてくれる。
boost::shared_lock<boost::shared_mutex> rlock(_mutex);
書き込みロック(unique_lock)は1つのスレッドからだけ取れる
// カウント変数を増加
{
boost::unique_lock<boost::shared_mutex> wlock(_mutex);
++_count;
}
読みこみロック(shared_lock)は何スレッドからでもとれる
boost::shared_lock<boost::shared_mutex> rlock(_mutex); ofColor color; // カウント値を表示 color.setHsb(abs(_count) % 255, 255, 255); ofBackground(color); ofDrawBitmapString((boost::format("%1%") % _count).str(), 10, 50);